予備知識等は要らず興味がある方は一気読みできます。深過ぎず浅過ぎずな内容です。
時系列的にも描写があるのでイメージしやすい。
しかしながら知財戦攻防は緊迫感は伝わりにくいかも。
興味を持つきっかけてしては大変良本であると感じます。

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インビジブル・エッジ 単行本 – 2010/10/15
タイガー・ウッズが市場シェア下位だったブリヂストンのボールを選んだその陰に知財あり。インテル、トヨタの他、実例満載の知的ビジネス書
- 本の長さ416ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2010/10/15
- ISBN-104163719903
- ISBN-13978-4163719900
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2010/10/15)
- 発売日 : 2010/10/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 416ページ
- ISBN-10 : 4163719903
- ISBN-13 : 978-4163719900
- Amazon 売れ筋ランキング: - 521,029位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 22,132位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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2016年11月28日に日本でレビュー済み
2010年の本。2人の著者は知財戦略コンサルタント会社「3LP」のパートナー。
曰く・・・
述べて作らず、信じて古(いにしえ)を好む(孔子)。孔子は発明は慎むべし、として排除している。古代ギリシャでもプラトンは模倣を重んじた。なにか新しいものを発明しようとする人びとに対して、世界は長いこと敵対的だった。
テキサスインスツルメンツ(TI)は半導体関連特許のライセンス料が安いと判断し、一気にライセンス料を10倍に引き上げ、訴訟も起こす。訴訟になると勝てないアジア勢はTIの条件をあっさりと呑む。1992年のTIのライセンス料収入は税引き前利益の71%を占めるほど。
クアルコムは、利益を上げるのに製品をつくる必要があるのか、と考え直す。儲からない製造事業に足を引っ張られていた。クアルコムは知財開発に特化。トロールと同じといえば同じだが、ウォール街でクアルコムをトロール呼ばわりする人はいない。コア事業をイノベーション創出、管理、ライセンス供与とするクアルコムの判断は結果的には大成功。
クアルコムのようなサメ型企業は、インフラや製造への投資をやめて知財に全力投球する。イノベーションという獲物だけを狙って泳ぎ続ける。製造特許は必要としないし他社の特許に依存することもない。獲得した特許は請われればどのメーカにもライセンスする。メーカーも自前の特許を持っているが、製造に力をとられるため、イノベーション創出競争でサメに太刀打ちできず、結局はサメに頼る。
サムスンは携帯端末1台あたり、50ドル程度のライセンス料を払っている、と推測される。
P&Gは、保有特許は取得から5年後または製品投入から3年後のいずれか早い時点から、あらゆる企業にライセンス可能とする方針を有する。このオープン・ライセンス方式は製品開発チームにとって大きな刺激となり、次の製品開発を急ぐ、という風潮が生まれた。自社の研究開発チームを社外とうまく協力させる。このコネクト・アンド・デベロップ戦略のもと、新しい技術は外から内へ取り込まれ、内から外へと出される。いつでもどこからでも有望な技術をすくい上げる機動的なイノベーション・ネットワークが実現した。
シスコ・システムズが急速に台頭したのは積極的な知財取得プログラムによるところが大きい。シスコは、技術的パートナーのネットワークを構築し、ターゲットを定め、有望な技術を果敢に買い入れる。
事業が傾いてやむなく撤退ということになっても、優良な知財を保有していれば、事業を高く売ることができる。
トヨタはサプライヤーのネットワークに資本関係を導入する。トヨタは純利益の10%以上を系列会社の株式持ち分から上げる。そうした関係をもつことでオープンなイノベーションへの取り組みを促す。ネットワークに参加する企業は利益共同体となり、敵対的調達、一方的な契約不履行、新技術秘匿などの身勝手な行動をとる動機は薄れる。アメリカの組み立てメーカーの生産性は大幅に向上しているが、サプライヤーの生産性はほとんど向上していない。トヨタのサプライヤーの生産性はトヨタと歩調を合わせて向上している。アメリカメーカーが日本メーカーに負けるのは組み立てメーカーの生産性の差ではない。ポイントは、サプライヤーが後れを取らないよう、トヨタがさまざまな形で力を貸してきたことにある。アメリカのサプライヤーは過去に煮え湯を飲まされた経験から、重要な技術やノウハウは秘密にしておかないと組み立てメーカーとの交渉で優位に立てない、と考える。
クロスライセンスは物々交換みたいなもので金銭のやりとりはほとんど発生しない。価値の差は無視するか、差金決済で済ます。当事者は正確な価値を開示したがらないため、取引はとかく非効率になりがち。
リーナス・トーパルズは、大学のメインフレーム機を利用するためにヘルシンキの寒いキャンパスを横切って大学のコンピュータセンターの端末までいくのをいやがり、学生寮からメインフレーム機にアクセスするために端末のエミュレータを開発。このためにOSが必要、ということになりニュースグループで助力を求めたのがリナックスのはじまり。
ゲイリー・キンドールは1973年にCP/M(コンピュータ用コントロールプログラム)を作る。これが最初のOSといわれる。CP/Mがさまざまなマシンに搭載されるため、キンドールはCP/Mをコンポーネントに分割する。コアになるのがBIOS(基本入出力システム)とBDOS(基本ディスク・オペレーティングシステム)。BDOSはMS-DOSの直系祖先。
最善の知財戦略のひとつは、急速に変化する知財ネットワークの「中心に位置する」ことである。
1950-70年代に日本企業は年間5億ドル以上をライセンス料などの技術移転に支払ったが、そのおかげで数兆ドル規模の経済成長を実現できた。当時のアメリカ企業は、反トラスト法違反で告発されるのを怖れ、進んでライセンス供与する風潮があった。GMも反トラスト法に怯え、日本メーカーの特許侵害に強く抗議できなかった。知財投資リターンは激減し、投資インセンティブは薄れてしまう。
ボストンの実業家ローウェルは、1811年にイングランドに観光旅行をしながらランカシャーなどの織物業者と会い、工場見学にこぎ着ける。ローウェルは写真のような記憶力の持ち主。織機を見て、記憶に焼き付け、ボストンで織機を作る。しかも、議会に働きかけて輸入綿織物に関税をかけさせる。当時のアメリカ人はなんでもありだった。新参者のアメリカは、製造機械から著作や芸術まであらゆる物をまねた。ディケンズの「クリスマス・キャロル」は、アメリカではたった5セント(ロンドンでは2.5ドル)で売られた。
中国は、巨大な国内市場がある。国内規格を決めてしまえば、外国企業は中国の独自技術のライセンスを受けざるをえない。そうすれば、外国企業とクロスライセンス契約を結ぶ立場になれるはず。そうすればこれまで進出できなかった市場にも打って出られる。しかし、この戦略は思ったほど上手くいっていない。新しい規格を開発しようとしても、外国の技術を一切使わないという条件下では時代遅れの技術になってしまう可能性がある。結局、知財の赤字からは脱却できない。
ヨーロッパには、いまだに知財紛争を解決するための枠組みがなく、専門の裁判所もない。解決の兆しもない。ヨーロッパは知財保護を弱める方針なのではないか。アメリカが1960年代から70年代にかけて独禁法の施行を強化し、イノベーションの創出意欲が低下したのとよく似ている。ヨーロッパ政策当局の姿勢は自殺行為。
知的資産は価値が高いにもかかわらず、値決めがうまく機能せず、かつ、商いも薄いとなれば投機家や相場師にとってチャンスがある。知財投機家(パテント・トロールたち)は、非難される。おそらく、生産者ではないがゆえに。金融の歴史を見ると、こうした反感は根強い。投機家批判は、市場の流動性と効率を高める上で投機家が果たしうる役割がいかに見落とされやすいかの証左。投機家こそ、知財市場の発展に欠かせない。
などなど。
曰く・・・
述べて作らず、信じて古(いにしえ)を好む(孔子)。孔子は発明は慎むべし、として排除している。古代ギリシャでもプラトンは模倣を重んじた。なにか新しいものを発明しようとする人びとに対して、世界は長いこと敵対的だった。
テキサスインスツルメンツ(TI)は半導体関連特許のライセンス料が安いと判断し、一気にライセンス料を10倍に引き上げ、訴訟も起こす。訴訟になると勝てないアジア勢はTIの条件をあっさりと呑む。1992年のTIのライセンス料収入は税引き前利益の71%を占めるほど。
クアルコムは、利益を上げるのに製品をつくる必要があるのか、と考え直す。儲からない製造事業に足を引っ張られていた。クアルコムは知財開発に特化。トロールと同じといえば同じだが、ウォール街でクアルコムをトロール呼ばわりする人はいない。コア事業をイノベーション創出、管理、ライセンス供与とするクアルコムの判断は結果的には大成功。
クアルコムのようなサメ型企業は、インフラや製造への投資をやめて知財に全力投球する。イノベーションという獲物だけを狙って泳ぎ続ける。製造特許は必要としないし他社の特許に依存することもない。獲得した特許は請われればどのメーカにもライセンスする。メーカーも自前の特許を持っているが、製造に力をとられるため、イノベーション創出競争でサメに太刀打ちできず、結局はサメに頼る。
サムスンは携帯端末1台あたり、50ドル程度のライセンス料を払っている、と推測される。
P&Gは、保有特許は取得から5年後または製品投入から3年後のいずれか早い時点から、あらゆる企業にライセンス可能とする方針を有する。このオープン・ライセンス方式は製品開発チームにとって大きな刺激となり、次の製品開発を急ぐ、という風潮が生まれた。自社の研究開発チームを社外とうまく協力させる。このコネクト・アンド・デベロップ戦略のもと、新しい技術は外から内へ取り込まれ、内から外へと出される。いつでもどこからでも有望な技術をすくい上げる機動的なイノベーション・ネットワークが実現した。
シスコ・システムズが急速に台頭したのは積極的な知財取得プログラムによるところが大きい。シスコは、技術的パートナーのネットワークを構築し、ターゲットを定め、有望な技術を果敢に買い入れる。
事業が傾いてやむなく撤退ということになっても、優良な知財を保有していれば、事業を高く売ることができる。
トヨタはサプライヤーのネットワークに資本関係を導入する。トヨタは純利益の10%以上を系列会社の株式持ち分から上げる。そうした関係をもつことでオープンなイノベーションへの取り組みを促す。ネットワークに参加する企業は利益共同体となり、敵対的調達、一方的な契約不履行、新技術秘匿などの身勝手な行動をとる動機は薄れる。アメリカの組み立てメーカーの生産性は大幅に向上しているが、サプライヤーの生産性はほとんど向上していない。トヨタのサプライヤーの生産性はトヨタと歩調を合わせて向上している。アメリカメーカーが日本メーカーに負けるのは組み立てメーカーの生産性の差ではない。ポイントは、サプライヤーが後れを取らないよう、トヨタがさまざまな形で力を貸してきたことにある。アメリカのサプライヤーは過去に煮え湯を飲まされた経験から、重要な技術やノウハウは秘密にしておかないと組み立てメーカーとの交渉で優位に立てない、と考える。
クロスライセンスは物々交換みたいなもので金銭のやりとりはほとんど発生しない。価値の差は無視するか、差金決済で済ます。当事者は正確な価値を開示したがらないため、取引はとかく非効率になりがち。
リーナス・トーパルズは、大学のメインフレーム機を利用するためにヘルシンキの寒いキャンパスを横切って大学のコンピュータセンターの端末までいくのをいやがり、学生寮からメインフレーム機にアクセスするために端末のエミュレータを開発。このためにOSが必要、ということになりニュースグループで助力を求めたのがリナックスのはじまり。
ゲイリー・キンドールは1973年にCP/M(コンピュータ用コントロールプログラム)を作る。これが最初のOSといわれる。CP/Mがさまざまなマシンに搭載されるため、キンドールはCP/Mをコンポーネントに分割する。コアになるのがBIOS(基本入出力システム)とBDOS(基本ディスク・オペレーティングシステム)。BDOSはMS-DOSの直系祖先。
最善の知財戦略のひとつは、急速に変化する知財ネットワークの「中心に位置する」ことである。
1950-70年代に日本企業は年間5億ドル以上をライセンス料などの技術移転に支払ったが、そのおかげで数兆ドル規模の経済成長を実現できた。当時のアメリカ企業は、反トラスト法違反で告発されるのを怖れ、進んでライセンス供与する風潮があった。GMも反トラスト法に怯え、日本メーカーの特許侵害に強く抗議できなかった。知財投資リターンは激減し、投資インセンティブは薄れてしまう。
ボストンの実業家ローウェルは、1811年にイングランドに観光旅行をしながらランカシャーなどの織物業者と会い、工場見学にこぎ着ける。ローウェルは写真のような記憶力の持ち主。織機を見て、記憶に焼き付け、ボストンで織機を作る。しかも、議会に働きかけて輸入綿織物に関税をかけさせる。当時のアメリカ人はなんでもありだった。新参者のアメリカは、製造機械から著作や芸術まであらゆる物をまねた。ディケンズの「クリスマス・キャロル」は、アメリカではたった5セント(ロンドンでは2.5ドル)で売られた。
中国は、巨大な国内市場がある。国内規格を決めてしまえば、外国企業は中国の独自技術のライセンスを受けざるをえない。そうすれば、外国企業とクロスライセンス契約を結ぶ立場になれるはず。そうすればこれまで進出できなかった市場にも打って出られる。しかし、この戦略は思ったほど上手くいっていない。新しい規格を開発しようとしても、外国の技術を一切使わないという条件下では時代遅れの技術になってしまう可能性がある。結局、知財の赤字からは脱却できない。
ヨーロッパには、いまだに知財紛争を解決するための枠組みがなく、専門の裁判所もない。解決の兆しもない。ヨーロッパは知財保護を弱める方針なのではないか。アメリカが1960年代から70年代にかけて独禁法の施行を強化し、イノベーションの創出意欲が低下したのとよく似ている。ヨーロッパ政策当局の姿勢は自殺行為。
知的資産は価値が高いにもかかわらず、値決めがうまく機能せず、かつ、商いも薄いとなれば投機家や相場師にとってチャンスがある。知財投機家(パテント・トロールたち)は、非難される。おそらく、生産者ではないがゆえに。金融の歴史を見ると、こうした反感は根強い。投機家批判は、市場の流動性と効率を高める上で投機家が果たしうる役割がいかに見落とされやすいかの証左。投機家こそ、知財市場の発展に欠かせない。
などなど。
2014年5月8日に日本でレビュー済み
知財を中心に据えていない企業戦略など戦略と呼ぶに値しないと私たちは考えている。
極端な言い方をするなら知的財産権で保護されないイノベーションは奉仕活動である。
知財を持たない企業が営んでいる事業は、本質的にはコモディティ・ビジネスである。
事業に競争優位をもたらすのは、資産の創造それ自体ではなく、所有権の設定である。
イノベーションとマーケティングを理解できているとしても、知的財産権を軽視する
ならば、その事業活動は奉仕活動またはコモディティ・ビジネスと呼ばれるであろう。
上記の指摘は鋭く、知的財産権は見ようとしない人には見えない現代の錬金術である。
極端な言い方をするなら知的財産権で保護されないイノベーションは奉仕活動である。
知財を持たない企業が営んでいる事業は、本質的にはコモディティ・ビジネスである。
事業に競争優位をもたらすのは、資産の創造それ自体ではなく、所有権の設定である。
イノベーションとマーケティングを理解できているとしても、知的財産権を軽視する
ならば、その事業活動は奉仕活動またはコモディティ・ビジネスと呼ばれるであろう。
上記の指摘は鋭く、知的財産権は見ようとしない人には見えない現代の錬金術である。
2013年5月28日に日本でレビュー済み
過去一世紀に渡り、裁判所と規制当局は、反トラスト法(独占禁止法)と知的財産権法の衝突を調節しようと腐心してきた。両者のバランスは一定ではなく、20世紀にはおおむね独禁法が優先されてきたが、最近では形勢が逆転してきた。当局は、イノベーションを促進するためには多少の市場支配はやむを得ないという立場になっている。
サンマイクロシステムズの創始者ビル・ジョイ
「頭のいい社員は仕事をしない。最も頭の良い社員は企業のために働かない。よって、イノベーションは社外で生まれる」
1997年、イギリスの大物歌手デビッド・ボウイは、自分の初期のアルバム25枚(約300曲)の著作権を担保に債券を発行した。この「ボウイ債」は、将来の著作権収入を債券保有者に配分するという制度で、この債券の発行によってボウイは5500万ドルを手にした。
フェイスブックに学ぶべき点
・ 名前、ソフトウェア、特許など、顧客に評価されてライバルに差をつけられる無形資産を持たない限り、ビジネスでは勝ち目がない。
・ 無形資産の財産権は所詮、ローカルなものである。グローバルに効力があるのは著作権だけである。よって、自社のブランドや特許の権利を全世界で保護したければ、それぞれの国で権利を取得する必要がある。
サンマイクロシステムズの創始者ビル・ジョイ
「頭のいい社員は仕事をしない。最も頭の良い社員は企業のために働かない。よって、イノベーションは社外で生まれる」
1997年、イギリスの大物歌手デビッド・ボウイは、自分の初期のアルバム25枚(約300曲)の著作権を担保に債券を発行した。この「ボウイ債」は、将来の著作権収入を債券保有者に配分するという制度で、この債券の発行によってボウイは5500万ドルを手にした。
フェイスブックに学ぶべき点
・ 名前、ソフトウェア、特許など、顧客に評価されてライバルに差をつけられる無形資産を持たない限り、ビジネスでは勝ち目がない。
・ 無形資産の財産権は所詮、ローカルなものである。グローバルに効力があるのは著作権だけである。よって、自社のブランドや特許の権利を全世界で保護したければ、それぞれの国で権利を取得する必要がある。
2012年7月22日に日本でレビュー済み
21世紀には知的財産戦略が企業に利益をもたらすとの信念から生まれたBCGコンサルタントが書いた経営読み物。
まだるっこしいダラダラ感あふれる叙述はこの手のアメリカ本には仕方がないこと、こういう書き方しかできない連中のモノ、ということでこれはもう仕方がないが、書かれていることの面白さから言えば、まあ、割り引くこともできよう。速読可能本だ。
知財戦略をコントロール戦略、コラボレーション戦略、そして単純化戦略の3面から解説し、それぞれを代表する企業として、ジレット、トヨタ、IBMを選んでいる。
(「第5章」のタイトル「ヒューレット・パッカードのコントロール戦略」というのはまずい。内容はジレットのフュージョン!)
デビッド・ボウイが「ボウイ債」を発行して資金を調達した話とか、今後の中国企業の知財開発プロセスや如何!という話もなかなか興味深い。
そして、結論。Web2.0時代を代表する企業としてフェイスブックを選択し、この会社から学べる3つの戦略についてそれぞれ7項目ずつ述べている。BCGのコンサル二人が言いたかったことは2008年8月執筆当時のフェイスブックの戦略に集約されていたんだろうか。
もっとも2012年の現在、フェイスブックが米NASDAQに上場後、株価の乱高下などいろんなことが継続中だけど、二人は果たしてどういう思いだろう、何しろ秒進分歩で進歩するこの世界、明日は何が起こるや分からない。
まだるっこしいダラダラ感あふれる叙述はこの手のアメリカ本には仕方がないこと、こういう書き方しかできない連中のモノ、ということでこれはもう仕方がないが、書かれていることの面白さから言えば、まあ、割り引くこともできよう。速読可能本だ。
知財戦略をコントロール戦略、コラボレーション戦略、そして単純化戦略の3面から解説し、それぞれを代表する企業として、ジレット、トヨタ、IBMを選んでいる。
(「第5章」のタイトル「ヒューレット・パッカードのコントロール戦略」というのはまずい。内容はジレットのフュージョン!)
デビッド・ボウイが「ボウイ債」を発行して資金を調達した話とか、今後の中国企業の知財開発プロセスや如何!という話もなかなか興味深い。
そして、結論。Web2.0時代を代表する企業としてフェイスブックを選択し、この会社から学べる3つの戦略についてそれぞれ7項目ずつ述べている。BCGのコンサル二人が言いたかったことは2008年8月執筆当時のフェイスブックの戦略に集約されていたんだろうか。
もっとも2012年の現在、フェイスブックが米NASDAQに上場後、株価の乱高下などいろんなことが継続中だけど、二人は果たしてどういう思いだろう、何しろ秒進分歩で進歩するこの世界、明日は何が起こるや分からない。
2011年9月10日に日本でレビュー済み
先日GoogleがMotorola Mobilityを約1兆円で買収するというニュースが流れた。Googleの目的は色々と取りざたされており、Google自身もAppleのように携帯電話製造に乗り出すのではないかと見る向きもあれば、Androidのプラットフォームに参入しているパートナー企業の携帯電話メーカーを訴訟の脅威から守るために、Motorolaの保有している特許を入手したに過ぎないという見方もある。
このインビジブル・エッジを読んでいる最中だったので、このニュースに接したとき、Googleの狙いは後者以外にないと思った。なぜなら、物づくりをしている企業はそれだけで弱みを抱えているからだ。すなわち、携帯電話メーカーであれば、規格にからんだ必須特許を使わざるを得ず、強い交渉力を得ることができない。
この本では、物づくりを行なっている企業のことを、中から外に向けて石を投げることができないので「ガラスの家」と読んでいる。これに対して、イノベーションに注力して有効な特許を持っていながら物づくりをしていない企業を「サメ」と読んでいる。このサメ型企業の典型はQualcommであり、物づくりをしている企業に対して強力な知財による交渉力を有し、莫大なライセンス料を得ている。
Googleはもともと物づくりをしていなかったので、強い特許さえ手にすれば、Qualcommのようにサメ型の企業となることができる。それに対して、AppleやMicrosoftなど、Android陣営に対して攻撃を仕掛けてくる相手は、物づくりをしている以上、「サメ」ではなく「ガラスの家」に過ぎない。したがって、物づくりをしていないGoogleが知財という武器を手にすれば、すぐに優位な位置に立つことができる。Googleがこの有利な立場を捨ててまで物づくりに固執することは考えにくい。
なお、このレビューを書く直前の9月7日に、Androidのプラットフォーム上でAppleと訴訟を繰り広げている台湾のHTC社に対して、今回Motorolaから得た特許を含む9件の特許を譲渡している。これは、最前線で戦っているHTCに対して、強力な武器弾薬を補給したような形となっており、先に述べたようにGoogleは特許をAndroidのプラットフォームを訴訟の脅威から守るための盾として利用していることが明らかだ。
インビジブル・エッジという題名からは、「見えない刃」という言葉を連想するが、このエッジという言葉は「競争優位」という意味もある。上述したGoogleの例にもあるように、現在は見えない武器としての「知財」をどのように利用するかでめまぐるしく競争戦略上のポジションが変化する時代である。この本の著者はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)において経営戦略の研究を行ってきた人達であり、ポーター教授の「競争の戦略」の内容を踏まえ、業界の競争環境を分析するフレームワークであるファイブフォースの中における知財の占めるポジションについても明確にした上で話を展開している。それゆえに、話の流れも明確で極めてわかりやすい。従来よくあった知財関係者による単なる思いつきや事例紹介の本とは一線を画していると感じた。知財関係者に限らず、経営に興味のある方々であれば、決して読んで損はない本だと思う。
このインビジブル・エッジを読んでいる最中だったので、このニュースに接したとき、Googleの狙いは後者以外にないと思った。なぜなら、物づくりをしている企業はそれだけで弱みを抱えているからだ。すなわち、携帯電話メーカーであれば、規格にからんだ必須特許を使わざるを得ず、強い交渉力を得ることができない。
この本では、物づくりを行なっている企業のことを、中から外に向けて石を投げることができないので「ガラスの家」と読んでいる。これに対して、イノベーションに注力して有効な特許を持っていながら物づくりをしていない企業を「サメ」と読んでいる。このサメ型企業の典型はQualcommであり、物づくりをしている企業に対して強力な知財による交渉力を有し、莫大なライセンス料を得ている。
Googleはもともと物づくりをしていなかったので、強い特許さえ手にすれば、Qualcommのようにサメ型の企業となることができる。それに対して、AppleやMicrosoftなど、Android陣営に対して攻撃を仕掛けてくる相手は、物づくりをしている以上、「サメ」ではなく「ガラスの家」に過ぎない。したがって、物づくりをしていないGoogleが知財という武器を手にすれば、すぐに優位な位置に立つことができる。Googleがこの有利な立場を捨ててまで物づくりに固執することは考えにくい。
なお、このレビューを書く直前の9月7日に、Androidのプラットフォーム上でAppleと訴訟を繰り広げている台湾のHTC社に対して、今回Motorolaから得た特許を含む9件の特許を譲渡している。これは、最前線で戦っているHTCに対して、強力な武器弾薬を補給したような形となっており、先に述べたようにGoogleは特許をAndroidのプラットフォームを訴訟の脅威から守るための盾として利用していることが明らかだ。
インビジブル・エッジという題名からは、「見えない刃」という言葉を連想するが、このエッジという言葉は「競争優位」という意味もある。上述したGoogleの例にもあるように、現在は見えない武器としての「知財」をどのように利用するかでめまぐるしく競争戦略上のポジションが変化する時代である。この本の著者はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)において経営戦略の研究を行ってきた人達であり、ポーター教授の「競争の戦略」の内容を踏まえ、業界の競争環境を分析するフレームワークであるファイブフォースの中における知財の占めるポジションについても明確にした上で話を展開している。それゆえに、話の流れも明確で極めてわかりやすい。従来よくあった知財関係者による単なる思いつきや事例紹介の本とは一線を画していると感じた。知財関係者に限らず、経営に興味のある方々であれば、決して読んで損はない本だと思う。